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Fulderaフルデラ
【g362.jpg:フルデラのご隠居さんと、生まれて3日目のヤギ】

Musutairミュスタイア、Fulderaフルデラ

世界遺産の古い教会を見た後は、古寺でおいしい料理を・・

スイス:グラウビュンデン州】[北村 峠一].(Kitamura)      

●恥ずかしくなるようなブログを読んで・・


 このミュスタイアの谷にある、世界遺産の教会のことをネットで探していたら、ある旅関連のブログの記事に、

「日本のおばさん観光客が、ちょうどやっていた結婚式の親族の場所に座り込み、正餐の儀式で、神父が口にパン(イエスのからだ)を入れる列にも並んだ。
 そして口で受けるのをいやがり、手に取ってしまったので神父もビックリした。さらに神聖な祭壇に入り込んで写真を撮りまくり、参列者が呆然と・・」

 こんな記事があるほど、ここはたくさんの日本人が行く観光地なのです。

 そしてこのような、日本人としてあまりにも恥ずかしい噂が残っているかもしれないところには、行きたくないとも思っていたのです。

Musutair
【g300.jpg:世界遺産・聖ヨハン大聖堂とミュスタイアの渓谷】

 ところがそのブログの筆者が、
「こんな見るに値しない世界遺産・・これならば日本中の寺が世界遺産になってしまう・・」とも書いているのですが、これには大きな疑問を感じます。

ミュスタイア
【g303.jpg:聖ヨハン大聖堂内部:8世紀の極彩色のフレスコ画
fuldera-mustair
【Mustair、Fuldera付近とアデージェ(東)、ドナウ(西)、ポー川(南)分水嶺】
 このミュスタイアの聖ヨハン大聖堂は、あのカール大帝が創建したと伝えられ、1983年にスイスとしては最初に登録された、ザンクト・ガレン修道院、ベルン旧市街と同時に世界遺産になったほどのもの。ヨーロッパが誇る世界遺産なのです。

 カール大帝(742-814年)と言えば「シャルルマーニュ伝説」という本が出るほどの英雄。現在のEUの範囲ほどにも勢力を拡大した、フランク王国の大帝なのです。その時代、今から1100年以上も前のフレスコ画が残るということなど、信じられないことなのです。

 それを「日本中の寺が世界遺産になるレベル・・」との発言には唖然とします。日本の8世紀頃の世界遺産と言えば清水寺、東大寺、春日大社など。キトラや高松塚古墳の壁画をはるかに越えるものが、鮮やかに残っているのですから。

 今回、イタリアのステルビオ峠から、ウムブライル峠、ミュスタイアの谷を通過しオーストリアに向かうのですが、その世界遺産の教会に立寄ったのは、そんな雑念を払拭するためでもありました。(世界遺産の教会紹介は別ページ)外観こそ質素なたたずまいの教会ですが、内部の壁画、壁土を塗り重ねていたため、保存状態の良い極彩色のフレスコ画に驚き感動したのです。そしてこの遺産の価値を、自分のサイトで改めて紹介する必要があるとも思ったのです。

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●スイスで一泊ぐらいしないと、申し訳が・・


 今回のひと月の旅の中で、スイス内に泊まる計画はなかったのですが、こんなこともあり、やはり1泊くらいはしないと申し訳ない気分になりました。物価は高いのですが、昨年若干残ったスイスフランが、予算外のへそくりだと思いましょう。

 ところがミュスタイアの村の宿はやはりスイスの観光地。2-3軒回って見たホテル入口の価格表では、安そうな宿でも朝食つき一人85スイスフランChf(約8500円)、普通レベルに見える宿で100Chf以上と高いのです。

Fuldera
【Fulderaの紋章】
 そこで、1997年の旅オッフェン峠に行く途中に見た村が、緑が多くて良かった記憶があり西に車を走らせます。そこはFulderaフルデラ村。ミュスタイア渓谷の「古寺」なんて、あの世界遺産の古い教会にも引っ掛けた名前でぴったりです。

 その道路わきにあるホテルには何台も車が止まり、こんな田舎なのにかなりの人たちがテラスでお茶をしています。 昨日までのイタリアの宿はがらがらだったのですが、日曜日のせいでしょうか。

 価格は朝食つきで1人80Chf、夕食つきで100CHF。2人で約2万円は同じようなイタリアの田舎の宿より高いのですが、近くにスーパーなども見えなかったので夕食付きに決めます。部屋は別棟の1階、風呂トイレは隣室との共用でした。星なしの宿でスイスでは安いのでしょうが、やはり共用のトイレは「今、他の人が使っているのではないか」などと気を遣うものです。

Fuldera
【h903.jpg:ホテル付近の360度:東〜南方向】

Fuldera
【v956.jpg:ホテル付近の360度:西〜北方向】

●ミュスタイアはなぜイタリアではなく、スイスなのか・・

 このミュスタイアの谷は、スイスで唯一のAdigeアデージェ川流域(ヴェネチュア付近で地中海に流れる川)で、地理的にはイタリアのはずなのに、何故かスイスに入っているのです。

歴史を見ると、
・5世紀までのローマ帝国のあと、ゲルマンのいくつかの国の領地。
・7世紀からフランク王国(カール大帝)領。
・9世紀に3分割したとき以降東フランク王国領〜神聖ローマ帝国領。
・1367年頃の地図では、マッチュ男爵Freiherr von Matsch領で、イタリア側にも広がっていました。
・1499年ハプスブルクは、スイス連邦とシュヴァーベン戦争をし、カルヴェンとドルナハの戦いに敗北した。同年開かれたバーゼル会議で、13州獲得が実現、事実上の独立を勝ち取った(1499。スイス独立)
・1512年、Calvenカルヴェンはスイス連邦に加盟します。その後東側のUntercalven(下カルヴェン)は神聖ローマ帝国側に戻りますが、このMunstertal(Obercalven上カルヴェン)はスイス共和国として現在に至っています。
http://en.wikipedia.org/【wiki/Three Leagues】
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●壁画のかわいらしい村・・


 夕食までの1時間ほど、この小さな村の中をまわってみます。20軒ほどの集落の家々の壁には、エンガディンでも描かれているような飾り絵があり、庭先には手作りの木工細工もあって散策を楽しくしてくれます。【●壁絵も参考に】

Fuldera
【r101.jpg:村の風景】

 村の周囲は牧草地、そのむこうにはイタリア国境の山が見えています。地図でもわかるように、スイスでこの谷だけがアデージェ川流域、ここの水はベネチュア付近に流れていくのです。

 北の山の中腹に見えるLuリュから、Pass da Costainasコスタイナス峠(2251m)を経由して、イン川のS-charlシチャールを結ぶトレッキングコースは、花も豊富な人気コースだと読んだことがあります。大分水嶺もあることですから、いずれ歩いてみたいところです。

Fuldera Fuldera
【g325.jpg:木工細工の店先】 【g326.jpg:グラウビュンデンの壁画はかわいらしい】

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●高い夕食代と思ったのですが・・


 夕食はいつも注文に苦労するものです。ここで出てきたメニューには、読めない単語が実にたくさん書いてあって、さてどれを注文するのか悩んでいると、
「夕食つき(HBハーフボード)にはこれが全部出る」とのことで驚きますが、同時に選ばないですむのでひと安心。ビールと地元の赤ワインをグラスで頼みましたが、下の写真が1人分の料理、20Chf(約2000円)にしては安いし、イタリアに比べてもかなりのおいしさです。

Fuldera
【g330.jpg:夕食:自家製テリーヌ(大根+セロリ+アップルサラダ+クランベリーソース)、タマゴ・クレープ・スープ、シーズンサラダ、子牛ロースト+ズッキニ・トマト+フライドポテト、ジェラート。朝食:この谷のチーズ、ハム、ジャム】

 スイスの物価は高いのですが、そこで生産し、加工しているチーズやワインなどの加工農産物は、歴史的にも有名で、 品質も高いのです。例えばチーズはイタリアやフランスの宿のマダムですら、「スイスのグリエールやエメンタールチーズを使ったフォンジュだよ」と、おいしさのパラメータのような説明をするほどです。

 スイスのワインは国内消費が大部分で、国外では高くてなかなか買えません。ですからスイスに旅したときは、地元スーパーで比較的安い地ワインを、部屋食の時に飲むのですが、実においしいのです。ただしレストランでは高いので注意、ちなみにここのグラスワイン、800円くらいしました。

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●食後の楽しみは、夕暮れ時の美しさ・・


 そして夕日が山かげに隠れても、いつまでも明るい村の牧草地を花を観察しながら、北の山の麓、アデージェ川支流のRom川まで散策してみたのです。

Fuldera
【g348.jpg:赤白系の花:●花の図鑑へ

Fuldera
【g320.jpg:青系などの花:●花の図鑑へ

 オッフェン峠方面の山に陽が隠れると、放射状に広がる縞模様。牧草地のたくさんの花を通してみる村のたそがれ時風景は、じっくり浸れる旅の楽しみです。

Fuldera Fuldera
【g350.jpg:オッフェン峠方面の山に日が沈む】 【g346.jpg:牧草地から村を見る】

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●夜、ガサゴソ・・ガサゴソ・・


 部屋に帰ってメモをしているときも、深夜も、そして早朝も、ずーっと・・「ガサ・・ゴソ・・」
 風の音なのか、牧草のこすれる音なのか時折聞こえていたのです。窓の外は真っ暗、きっと庭の牧草の中を歩く動物でもいるのだろうと思っていたのです。

 朝食に行くとき、宿のおじさんに声をかけます。昨日北の庭で牧草を刈って日に干し、夕方大きな毛布のようなもので大切そうに包み、どこかに運んでいた人です。今朝は西側の牧草、その鎌の歯は波打った形ではじめて見たものだったので、写真を撮らせてもらいました。

Fuldera Fuldera Fuldera
【g359.jpg:おじさんが鎌で草刈をしている。鎌を拡大してみる・・日本の鎌の形とちょっと違う】 【g361.jpg:生まれて3日目のヤギを見せてくれる。僕たちが泊まった部屋の隣の納屋にいた】

 食後そのおじさんが、僕たちと、近くにいたフランス系らしい夫婦宿泊者に、
「一緒にこっちへ」と声をかけてくれました。ついていくと納屋のドアを開き、暗い奥に置いてあった木箱の紐を解きました。
 出てきたのは、子ヤギ。
「あそこの、北側の山の斜面で放牧しているヤギ。そこで生まれて3日目の子ヤギなんだ。山の中に放っておくと、他の動物に襲われてしまうので、ここで育てているんだ」とのことでした。

 昨夜のあの音の原因はこの子だったのです。ちょうどこの納屋は僕たちの部屋に面した裏側で、あの小さな木箱の中、真っ暗な納屋の中で子ヤギは、不安から小さく動いていたのでしょう。

「オスですかメスですか」の質問に、おじさんは二人の女性がいるのに、
「メスだよ」と言って、お尻のうぶ毛を開いて見せてくれたのです。

宿紹介●スイス:グラウビュンデン州(GR)
Fulderaフルデラ村
<LandGasthof Staila ガストホフ・スタイラ(☆?)>



【宿のおじいさんは山羊の世話も】
・2008年6月22日-23朝日、1泊利用。
・ステルビオ峠からミュスタイア付近で宿を見つけようとして。
・家族経営。
・ツインルーム、ハーフペンション(夕・朝付)(200Chf(約20千円/2人)
・料理はかなりおいしいが、スイスだから高い。
・ワインは高いので注意。
・別棟、隣室との共用トイレ・風呂の部屋。
・各地への基点になりうる。
・駐車場は建物横。

私のお勧め度:3.0
●近隣で利用した宿情報
http://www.hotel-staila.ch/
・Familie A. u. H. Wymann-Hohenegger
・住所など:CH-7533 Fuldera
  Tel.: +41(0)81 858 51 60 Fax:+41(0)81 858 50 21
Email: info@hotel-staila.ch
Google地図
hotel-staila
<近隣のサイト>
http://www.muenstertal.ch/【TURISSEM VAL MUSTAIRの観光ガイド】
http://www.nationalpark.ch/【スイスのnationalparkのガイド】

<関連するサイト>

シチャールからミュスタイア谷【足で歩くスイス・トレッキングガイド:S-charl 〜Pass da Costainasコスタイナス峠(2251m)〜Lu。チェルフのコース
http://www.myswitzerland.com/【Fuldera: Through the high valley to the UNESCO World Cultural Heritage Site】
http://map.search.ch/【スイス詳細地図】
世界遺産.net【ミュスタイアの聖ヨハネ・ベネディクト会修道院】
聖ヨハネ・ベネディクト会修道院【MySwiss】

<関連書籍・地図>

ヨーロッパアルプスのハイキング地図、ガイド洋書  山渓など:日本語編

<関連HOTELなど>

【Hotel-Club:イタリアのホテル】  hotel 海外ホテル予約

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