St.Michael im Lungauザンクト・ミヒャエル・イム・ルンガウ
「羊命救助!!」・・・農家のドアを早朝から叩きます。
まさにここが、琥珀街道・塩の道・古代ローマ街道・タウエルン街道と、5千年以上続く歴史の道。郵便馬車の「宿・駅」なのです。[北村 峠一].(eu-alps)
<2003.6.9(月)>
宿の朝食が8時からなので、隣町ザンクト・ミヒャエル・イム・ルンガウまで散歩することにします。片道1kmちょっとの道のり、車も通らない静かな、すがすがしい朝の空気を吸いながら。
「ゼー・ゼー」という苦しそうな、絶え絶えの声が、村のはずれの先から聞こえます。どこからだろう?と探すと、大きな材木の間に子羊の体がはさまり、首が牧場の金網の中に深くきつく食い込んでしまっているのです。子羊はすでに疲れ切って、膝を折ってしまったので、余計に体重が針金にかかっているのです。
「メー・メー」という親羊の鳴き声もあったのですが、それがなぜなのかわかりました。この狭い金網の間にどうやって首をはさんだのでしょう。私の力では外れません、針金を切るしかないのですが、そんなものは持っていないし。
【221.jpg:この柵近くの、大きな材木の間。このワイヤーに首を挟まれていた。今、切れている個所に。】
【213.jpg:右の納屋が羊たちの小屋。農家はその奥に、大きな建物だった】
牧場の小道をはさんだ農家が、多分この羊たちの飼い主でしょう。その玄関先で「Morgenおはようございます」と何度も呼びますが、なかなか人は出てきません。気配はあるので、朝の忙しい時間帯のため気が付かないのでしょう。羊のために一刻もと、台所らしいドアを何度も叩きます。やっと出てきたおばあさんに
「子羊が首をしめられている、急いで・・・」と。おばあさんでも簡単には金網から外すことは出来ず、納屋にペンチを取りに走り、その一本のワイヤーを切ってやっと救出です。青ざめた(?)子羊を牧草地に戻すと母羊が駆け寄り、首から体全体をなめまわします。
「あー、これで大丈夫」僕たちが、また散歩に歩き出すとき、おばあさんは感謝の顔で手を振ってくれます。
帰り道、あの子羊を探します。多分あの壁に沿った木陰に寝ているのが、あの子でしょう。そしてこっちをじっと見ているのが親羊でしょうか?
【231.jpg:左の壁面に動かずに居るのが、あの子羊だろう】【右235.jpg:散歩の帰りに、じっとこっちを見ていたのは母羊か?】
【239.jpg:右端の納屋の左、白い建物が農家の家の建物。ずっと先の山がKatschbergカッチュベルク峠方向】
白や茶のひつじに混じって、真っ黒な子羊がいます。ちょっと羊とは思えない、異様な動物のようで、見慣れないとちょっと怖いですね。
【●羊/ひつじ/Sheep】も参考に。
【225.jpg:白、縞、茶、黒の羊。真っ黒な子羊は、羊のように見えない。犬か、異様な動物のような】
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このなんでもない通り、ザンクト・マルティン村からザンクト・ミヒャエルに向かう通り、Murムーア川の平野にそったこの旧道が・・・。
【1d3.jpg:左がザンクト・マルティン村、正面がMurムーア川の平野、右がサンクト・ミヒャエルの方向。この旧道が、昔からのタウエルン街道】
カッチベルク峠とタウエルン峠に挟まれた、この狭い場所は、
・地中海・アドリア海からバルト海への「琥珀街道」のルート、
・ハルシュタット文明の時代には「塩の道」、
・古代ローマの時代には、ローマを基点とする軍時、交易の「ローマ街道」、
・西の「ブレンナー街道」に対して、東の「タウエルン街道」として、かつては栄えた街道だったのです。
町の中に入ってきました。「Gasthof-Postガストフ・ポスト」と壁に書かれた宿のカンバンは、郵便馬車のデザインです。
【143.jpg:Gasthof-Post、郵便馬車のカンバンがあり、】 【144.jpg:丸窓には宗教画が描かれている】
まさにここが駅、宿場。遠くから「ポスト・ホルン」(到着を伝える御者の笛の音)」が聞こえると、宿の親爺は、代替の馬の準備、食事の用意、泊り客のための部屋の手配、次の町に行く客を呼び、郵便袋の仕分け・・・と忙しく走り回ったのでしょう。
鉄道の時代が来て、あまりにけわしいこのルンガウの谷に線路がひかれる事はなく、40kmも西にタウエルン鉄道トンネルができたのです。人の流れもすっかり変わり、すたれ、静寂が戻った村の近くに高速道路が最近やっと出来たのです。この5千年以上続く歴史の街道、その静かな宿場町の中心がここなのです。
【1c5.jpg:町の中心、教会の塔が高くそびえる】 【178.jpg:13-15世紀に建てられたという教区教会の内部には】
静まり返った、その広場に中心にある教会に入ってみます。熱心な信者が、朝供えた祭壇のロウソクの火だけの薄暗い内部です。出入り口の両側、壁に文様・文字の書かれた古い石碑があり、ローマ石と言うのでしょうか大きな石材が。ドアの上には3人の人物を彫った円形の石が埋め込まれています。Webで調べるとこの教会は13-15世紀に建てられ、その内部には古代ローマの遺品などが配置されているとのこと。旅行者で賑わったタウエルン街道の記念碑の教会は、博物館も兼ねています。
【192/198.jpg:ローマ時代のGrabmedaillon(円形浮彫碑)と文章】
【199.jpg:ローマ石というのか?】 【1b5.jpg:ドアの上の高い位置に、3人の半身像。古代ローマ頃の彫刻を壁にはめ込んだものであろう】
ザンクト・マルチンの村に戻ります。
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朝食後、この宿のパンフレットを貰い、これから行く「Nockalmノックアルム自然公園」の分岐ポイントを教えてもらい・・・
【261.jpg:ザンクト・マルチン村、さようなら】
【254.jpg:自動車道路でまたザンクト・ミヒャエルの町付近から南下。Villachフィラッハへの一般道を行く。】
<Lungauルンガウを別れ、カッチュベルク峠(1641m)に向かいます・・・>
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