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サン・ヴェラン村の野の十字架

St. Veran サン・ヴェラン村(2)
       ・・・伝説のドラゴンは、ハンニバル軍では?

ハンニバルの進軍状況 ・・・古い家々は、村の人たちの手でずっと保たれてきました。守護神のライオンも、野の花も、「地元部族の長老」の話も。
フランス:(05)オート・アルプ県】 [北村 峠一].(Kitamura)     


 おじさんが石とセメントで、少しづつ壁を積み上げていました。それぞれの家々も、昔からこんな構造で作られてきたのでしょう。今でこそ後ろに見える電動のコンクリート・ミキサーを使っていますが、それすら手作業だったのです。家が完成するのにどのくらいの時間と労力がかかったのでしょう。

 フランスの各地を気球から撮影した本『La-France』を以前神保町で入手しましたが、その中にある30年以上前のサン・ヴェランの村の建物は、現在の村とほとんど同じでした。日本では、ほんの数年でがらっと変わってしまいますが・・・
  <資料名:『La-France』、Pierre-Grascar編Aliain-Perceval写真、Arthaud社出版、1971年>

 サン・ヴェラン村
【333/312.jpg:石とセメントで斜面に基礎を積んでいく】

 
【452.jpg:岩の斜面に石とセメントと木組みで作られた民家が、ひな壇のように】 【St-Veranの航空写真:『La-France』より 】


 ここサン・ヴェランの教会は17世紀の建造と書いてあります。同じようなライオン像はギエストルの教会(16世紀)にもありました。この教会で、じつにあたたかく、ほっとするような聖母子像の写真があり、献金・購入しました。イタリア・アオスタのLa Thuileで入手したマリア像と並んで今、我が家を見守ってくれています。
  <写真の塑像は、Maxime Real Del Sarte(1888-1954)フランス人の作品でした。>

   
【2c8.jpg:聖Veran教会 17世紀建造】  【444/1a1.jpg:Saint-Veran教会の入口を守る一対のライオン】 【聖母子像:Maxime Real Del Sarte(1888-1954)作】 



 村の北側の丘に登ってみます。ここにも14個のほこらが礼拝堂に続いていて・・・木や金属の十字架とともにしづかに村を見守っています。そして一面のお花畑・・・谷の向こうの山をしたがえて、今を盛りに咲き乱れています。

 
【351/339.jpg:村の北側の丘に登ると・・・14個の祠と・・・】


【3c5.jpg:礼拝堂と木の十字架が村を見守っています】



【377.jpg:Trolle-d-Europe西洋キンバイの群生。半球状の花をつけるので,グローブ・フラワーとも。】


【428.jpg:丘一面に・・・雪の時期は信じられない風景でしょうね。】


【429.jpg:青、黄、赤・・・いろんな種類の花が】


 このサン・ヴェランの花、モン・ヴィーゾ(モンテ・ヴィーゾ)の花をたくさん見て、思わず村のおみやげ屋で、「高山の花図鑑」:Wolfgang-Lippert社の『Fleurs-Des-Montagnes』(フランス語=15.5ユーロ≒1800円)を購入してしまいました。帰国したら整理しようと・・・。しかし花の名称を見つけて整理するのって大変ですね。


 東南に位置して・・・Tete de Longet(3151m)や、Tete des Toillies(3176m)が、このサン・ヴェランの山Picde-Chau-Renard(2989m)のゆるい斜面のむこうに見えます。これから行こうとしているAgnelアニュエルの峠は、さらに左に5kmほどのところに位置しているはずです。


【403.jpg:右がTete de Longet(3151m)、左がTete des Toillies(3176m)と思われます。】

●このサン・ヴェラン(St-Veran)は、「●フランスの最も美しい村(仏:Les plus beaux villages de France)」に選ばれている。

 Les Plus Beaux Villages de France・・・リーダーズダイジェスト、ミシュランなどにガイドブックある。

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Elephants

●ハンニバルと象がサン・ヴェラン(推定)を進軍した状況など

 −− ポリビオス(BC200-BC118)の記述による。「」は推定の地名 −−
 ●前のポイント「St-Veran1」← 【●ハンニバルの有力推定ルート】 →●次のポイント「Agnel峠への村」




<ここまでの経緯>
 約4カ月半前 スペインを出たカルタゴの軍は、「ローヌ川〜ドローム川〜デュランス川〜ギル」川をさかのぼる。案内人の計略で、「ケーラス」渓谷で崖の上から岩による大襲撃をされ、歩兵6千、騎兵7百、象6頭と今までにない多大の死者・けが人を出す。紀元前218年10月18日朝、「シャトー・ケーラス」を出発、「ヴィル・ヴィエイユ」を経由しこの地に。気温が下がり、時には雪もよう。

<この地のハンニバル軍>
 「ケーラス」渓谷で地元部族の大きな襲撃に対し、ハンニバルは反撃をせず先を急いだ。一刻も早く、雪と氷で閉ざされる冬のアルプスの峠を越え、イタリア・ローマに向かおうとしたためである。

 この先の村の地元民も、大量の軍に驚き近くの山に隠れ、軍が通り過ぎるのを待つばかり。ハンニバルの軍に今、ガイドがいない。・・・彼らはこの「ギル川支流のAigue」川をさかのぼるのが、イタリアに抜ける最短ルートと判断した。 渓谷を出た後、標高も1500mを越え、気温が下がり、時には雪もようとなる。

アルプスの登り道から8日目。イタリア国境の峠越えまで残り7日。
軍の規模は、歩兵2万9千、騎兵6千9百、象20頭。



●「聖ヴェランとドラゴン」・・・この村に伝わる伝説

 この地の聖者「Saint-Veran聖ヴェラン」は、6世紀にこの地で恐ろしいドラゴンと戦い、勝った。 プロヴァンスからドラゴンが逃げるに沿って12の血がその傷から地上に落ちた。 それらの地上のしるしは、リュベロンから、ケーラスに移された。(M-p297など)

 ・・・私の独自の推測なのですが・・・
 この伝説は、デュランス川のEspinasses エスピナスの村付近で、友好のしるしとして[枝と花輪]を持って挨拶に来た「地元部族の長老=聖ヴェラン」と、「ハンニバル軍=ドラゴン」の話がこのように変わったように推定できるのです。

 ここで、リュベロン地方(=アルル、アヴィニョンなど)はローヌ川に沿った地、ハンニバル軍がスペインから東に向かい、ローヌ川を渡った付近です。そして最初の戦闘もその渡河前後に起きました。
そのあとのいくつかの戦いがあり、さらにケーラス地方(Guillestreギレストリのギル川上流、モン・ヴィーゾ(モンテ・ヴィーゾ)への一帯、サン・ヴェランも含む)で大きな奇襲により、ハンニバル軍は多大の血を流したのです。

 地元部族の長老の計略は、ハンニバル軍からたくさんの物資、食糧、動物、武器、貴金属などをこの地にもたらし、聖者としてたたえられ、祭られたでしょう。

 峠越えの史実は紀元前218年、一方この聖ヴェラン伝説は6世紀と700年あまりの差はあります。が、2200年以上前の伝説なので・・・この程度の差はありうると思われるのです。

 また、カルタゴが滅び、ローマ帝国がこの地を制圧し、キリスト教の普及など、まさに「象まで連れた数万のハンニバル軍=強力な信じられないような破壊者=ドラゴン」の伝説ができたようにも推測できます。

本:『中世ヨーロッパ (新書)』木村 尚三郎 (編さん) 、有斐閣 (1980/11) p120-龍のイメージと森・・空飛ぶ龍/蛇の2種がある

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・・・皆さんの想定、推測情報などありましたらお願いしますハンニバル応援

参考資料:
 この記載情報はポリビオス(BC200-118)の記述による。これをもとにルートを推定・解説している本は以下のものである。
 ・Gavin de Beerギャヴィン・デ・ビーア 『ALPS and ELEPHANTSハンニバルの象』時任生子訳:博品社(G-page)
 ・John Prevasジョン・プレヴァス『HANNIBAL CROSSES THE ALPS ハンニバル アルプス越えの謎を解く』村上温夫訳:白水社(J-page)
 ・The Green Guide:『French Alps』2001 Michelin:(M-page)
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<付近のWebサイトなど>
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<アニュエル峠に向かう街道をいきます・・・・・>
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