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kartitsch干し草と教会

Kartitschカルティッシュ(2)
 牧草が干している風景を、単にノスタルジックな風景、懐かしいとだけ感じていた村・・・

 実は2003年夏猛暑などの環境問題、BSE、農業人口など、農業に関するいくつもの課題も抱えていたんですね。
[北村 峠一].(eu-alps)      


 昨夜の若主人の話で、今日は雨かと心配し早朝からベランダに出て外を見ます。雲が低く垂れ込めて、山にへばりついています。海抜1350mから1400mほどに位置するこの村、南に見えるイタリア国境の2600mのアルプスの大分水嶺、北にあるグロスグロックナーの山脈、その間に東西に流れる川と低い峠の村は、南、西そして北からも雨を呼ぶ地形に見えます。

 まだ天気が持っているのが救いですが、もしグロスグロックナー山岳道路の北が大荒れなら、リエンツの町などに立ち寄り、なるべく長くイタリア側に居れば、ドイツ側の天候も移動し、あまりひどくないことになるのではないのか? と今日の旅ルートを考えます。

 この目の前のKarnische-Dolomiten Str.街道、早朝でかつ主要道路でないため、ほとんど車が走っていません。少し寒いかなーと思いながらも、ベランダから付近の建物を観察します。6年前と比較するといくつかの建物が増えています。教会の左に見えるおしゃれなレストランかガストフのような建物、その左にあるスーパマーケット、さらに左手にあるガストフも前回は気が付きませんでした。このガストフ・ドロミテンホフも、競争相手がたくさん出来て大変なんだろうと思います。

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【1b1.jpg:宿から見下ろす村の風景。左(東)はカルティッシャー峠方面、正面(南)イタリア国境Karnische-Alpenの西の端、右(西)シリアン、ドッピアーコ方面】

1997年の朝食 kartitsch
【6年前の朝食・・・と】【1d9.jpg:ここの朝食につく大きな大量のハムは絶品。パンも手で割ったときの素晴らしい匂い、口に入れたときの香ばしさが】

 朝食は前回と変わらずたくさんのハム、チーズ。味もあの絶品のままです。そしてここのパンの香ばしさは、この村で食べるからこその味なのでしょうか。ここから20kmほど東にあるMaria Luggau マリア・ルカウのパンは美味しいといいますから、その味を引き継いでいるのかもしれません

 今日はなるべくゆっくりとドイツ側に向かうことにし、ユーロの両替のために郵便局が開くまでの1時間ほどを、村の中を散策することにします。6年前の風景はどう変わったでしょうか?

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【201.jpg:朝食の後、村の散策に出かける】
旅の絵本:カルティッシュ
●旅の絵本へ


 教会前の庭から見る西の風景・・・建物は変わりません、この牧草地の台地のうねりも変わりません。が、あの杭に挿して干してあった牧草のシーンは・・・山の斜面に一部見えるだけ。機械化が進んでいるのでしょう。

1997年の眺め

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【174.jpg:(この映像みは前日撮影)】

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【272.jpg:教会の庭から見る西の山の斜面。目の前の小川が、西に下ってDrauドラウ川に流れ込む。この小さな川が、目の前のうねった風景を作り上げたのか】

 ガストフ・ドロミテンホフは、ログハウスのパインの木の色が、日に焼けて黒っぽくなったけれど・・・左に見えた納屋がガストフになって、右の斜面にCOOPが出来て・・・

1997年の眺め  kartitsch
【273.jpg:正面がガストフ・ドロミテンホフ。右の半地下の建物がCOOP】
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1997年の眺め

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【292/295.jpg:右にWinklortal=1h、Prinz-Heinrich-Kapelle=2h、Obstanser
-Seohutte=3h。
左にLossersago=30min、Erschbaumertal=1.5h、Filrool-Standschutrenhutte=4h。
左にGranzland-Wanderweg、Obertilliach=13km、Untertilliach=20km、
Markierung-Grun-Weis】

 当時からの納屋の木の壁は、さらに黒光りし、道傍のキリスト像もそのまま。この道路標識は新設されたようだ。 右に登って行く道を行くと、湖があって、山小屋があって、イタリアのComelicoコメリコに抜けるんですね。

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【284.jpg:川に沿ってさかのぼる。朝の雲の流れ、教会、なだらかな山の風景】

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【291.jpg:山小屋風の建物を右のほうに・・・登山道があって・・・】

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【311.jpg:イタリア国境の山Casera-di-Sivella(2678m)。そこにあるPfannspitze小屋、Obstanser-See湖。そこからWinklerの滝が落ちている】

●アルプス売却騒動Austria in twin peak climb-down(2011.6-8)

 カルティッシュのイタリア国境のアルプス2峰 Grosse Kinigat(2689m)とRosskopf(2603m)の売却話が、一般市民からの強い批判・反対で中座した。
当初オーストリア政府はこの山を、121,000ユーロ(約1300万円)で売却しようとしていた。そして韓国・ロシアなど海外から多数の問合せ通話やメールが殺到したが、第一次世界大戦時の記念碑ともいえるこのアルプスの山に愛着を持つ地元カルティッシュ村が反対。TV・新聞などのマスコミを味方につけ、結局政府の森林管理局が買い取ることで決着した。

http://www.austriantimes.at/【山の売却計画は保留】
http://www.bbc.co.uk/news/【BBCニュース:オーストリアの2峰売却撤回へ】
http://www.summitpost.org/【Grosse Kinigat / Monte Cavallino 山紹介】

 前回も来た製材所まで小川に沿って上り、あと2-3km東にあるKartitscher-Sattelカルティッシャー峠(1526m)、この付近からは50mほどしか高くない峠方面を眺めます。この付近のなだらかな丘陵地、あの峠のむこうはVillachフィラッハ方面にGailガイル川が流れているんだなー・・・などと。

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【2a2.jpg:前回もここまで来た製材所。この木のチップ、何に使うのだろうか】

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【2c3.jpg:正面(北)の山がLienzer-Dolomitenリエンツ・ドロミテ山脈の西の端。右(東)の低くなっているあたりが、Kartitscher-Sattelカルティッシャー峠(1526m)、この付近からは約100m高いだけだが分水嶺。その東はVillachフィラッハ方面にGailガイル川が流れる】

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【2c4.jpg:牧草地の道。送電、変電の建物と、干し草の眺め】
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【2d4/300.jpg:干し草の列。杭は太い木に、4本の細い木を直角に差し込んだもの】


 前回もこの付近で折り返したのです。牧場の木の柵、刈り取った牧草を干してる塊が、一面に点在する風景・・・ここは変わりません。

 この2mほどの太い木に、4本の細い木を直角に差し込んだもの・・・干し草用の杭(クイ)だったんです。刈り取った牧草をこの杭で干して、乾いたところで牛舎や民家の屋根裏に保存するのです。

 雪に埋もれた冬、牛たちは牛舎で過ごし、屋根裏から落としてもらったこの牧草を食べながら春の芽吹きを待つのです。一部の小さな農家では、牛たちも農家の建物に同居しご主人たちと寝起きを共にする時代もあったことでしょう。

 あの民家の壁に1846年建造の表示があります。ハプスブルク帝国の実質的に最後の皇帝。国民から愛され、グロスグロックナーの大パノラマにも名前の出てくるフランツ・ヨーゼフT世(1848-1916)が即位する2年前。

 150年ほど前に建てられた家が今でも残る国なんですね。僕たちの泊まったガストフ・ドロミテンホフはさらに古い、17世紀といいますから、実に長持ちです。日本の民家が30年位で立て替えることを思うと、単に湿気が多いから・・・とはいえないようです。

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【318.jpg:農家のように見える民家も、シーズンにはプライベート・ルームになるので、ここチロルの客の収容力はすごく大きい。右の家の窓には飾り絵がかいてあり、1846年建造の表示がある。150年もの歴史、第一次・二次大戦の前からの家なのだ】

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【323.jpg:たくさんの干し草、この風景がカルティッシュ】

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【332.jpg: 正面(北)の山がLienzer-Dolomitenリエンツ・ドロミテ山脈の西の端。右(東)の低くなっているあたりが、Kartitscher-Sattelカルティッシャー峠(1526m)】

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【344.jpg:正面(南)イタリア国境Karnische-Alpenの西の端 】

旅の絵本:カルティッシュ●旅の絵本へ
1997年の眺め

 以前の映像にも、山の中腹に雲がかかっていました。雨の多いこの村、2003年夏の猛暑はどう過ごしたのでしょう。フランスでは牧草の収穫も大被害を受けたといいますが、このカルティッシュ村は相変わらず雨が多かったのではないでしょうか?

 さらにWebでオーストリアの牧畜関係を調べてみると、農業人口の減少問題、BSE問題(ユーロッパ内で最後まで安全だったオーストリアからも2001年末には発見)、環境問題・・・などと、豊かに、のんびりと見える村の生活にも、実はたくさんの難問があるようです。

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 宿のおばさんにお別れをし、銀行で換金した後、村を出発し谷を戻ります。

 機械で巻き上げ、ビニールで包んだ干し草の横に立つ、今は使われなくなった干し草をかける杭・小屋の対比が少し哀れです。

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【351.jpg:今は使われなくなった干し草かけと、ビニールでパッケージされた干し草】

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【364.jpg:雲が山の中腹にかかる。Drauドラウの渓谷まで高度差は約300m。カーブの美しい眺め】

 道傍に立つおじさんが手にしているもの・・・「鎌」です。現在は急な斜面や機械が入りにくい場所でのみ使われている鎌も、このおじさんたちの次の世代には使われなくなって、この光景も見ることが出来なくなるのかもしれません。

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【373.jpg:道傍に立っているおじさんが手にもっているもの、あれこそ「鎌」。機械の入らない場所をあの鎌を振って刈り取るのです】

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【374.jpg:この干し草のシーンも、次回来るときにはすっかり機械に変わり、ビニールパッケージになってしまうのでしょうか。淋しいですね】

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【396.jpg:ガイル渓谷まで後わずか。右がLienzリエンツ方面】

< Drauドラウ川の渓谷が見えてきました。右にリエンツの方向に下っていきます・・・>
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