Nassfeld-Rupertiweg ナスフェルト・ルパティヴェク山(1990m)
アルムの小屋から片道1時間半の、あの小高い山の鼻まで往復します。
登ってきてよかった・・・この眺め、スロベニア、イタリア国境は岩山が、オーストリア側はなだらかな丘陵地と豊かな谷が広がります。
[北村 峠一].(eu-alps)
5:30過ぎ、ベランダから外を見ます。ちょうど峠の真上に、ほぼまん丸の月が浮かんでいます。・・・が、深い霧が谷から上がってきて、ナスフェルト峠を隠し始め、あたりはすっかり霧の中に入ってしまいます。・・・このペースだと曇りなのかなー? それとも晴れる?
【47 1.jpg:早朝、月が光っている・・・が、霧が流れ、しばらくすると・・・山はすっかり見え なくなる】
7:30、朝食。どうしようか、まだ悩んでいます。
8:50、霧が流れ山が見え始めると・・・あー、これは確実に晴れる、山に登ろうと決め、最小限の荷だけを持って山に向かいます。ヴァッチゲール・アルムの小屋を越え、池やホテルを小さく眼下にする頃には、直射日光と長い登りで、ヒンヤリとした空気の中でも汗を感じるほどです。
【615.jpg:8:50歩き始める・・・9:07分岐点で・・・今日は無理かと 思った天候も、おかげで日が射してきて・・・】
【628.jpg:登りだした登山道路 から、昨日の池が見える。対岸の丘は、スキーゲレンデがくっきりと】
9:30、最初の分岐地点に到着です。今来た右方向のS.Nassfeldナスフェルト峠に1時間、Watschiger-Almヴァッチゲール・アルムへ30分。目的のRupertiwegは「10」と書かれています。10分でしょうか。
山の上から、犬を連れた登山者が両手にストックを使って快調な速度で下りてきます。あのガルトナーコーフェル(2195m)の、岩山ルートを回って来たようです。
【639.jpg:途中の分岐、右へS.Nassfeld(1H)/Watschiger-Alm(30M)。左へKuhweger-Thorl、Kammleiten(2H)。Kuhwerger-Alm、Gorgarnitzen-Klamm ○10Rupertiweg。「GEO-TRAIL」の表示はトレッキングのルートでしょう。山の上から、犬を連れた登山者が下りてくる】
前方に10数人の登山グループが見えてきました。ちょっと頑張って追いつきましょう。
9:35、峠の分岐でその団体に追いつきます。多分40-50才代の人たちが中心、30才代の人が数人、と僕の目には見えるのですが、実際にはもっと高齢の場合が多いのです。この案内表示板によると、左のRupertiwegルパティヴェク(目標の頂上)までやはり「10」の表示。10分の意味ではないようです。
【65 9.jpg:前方に登山グループがいる。あそこに追いつこう】
【670.jpg:9:36峠の分岐でその団体に追いつく。40-50才代が中心で、30才代も数人。表示は:左○10Rupertiweg、Kuhwerger-Alm(1H) Gorgarnitzen-Klamm(1.5H)】
僕たちが行こうとしている山の鼻に向かって、10数人のパーティーが出発しました。残りの3人は、ここであのグループの人たちの往復を待っているよう です。
【699.jpg:鼻の 部分の高いところに往復するのか、10数人のパーティーが先に出発。グループの3 人は往復せずにそこに残る】
僕たちが息を整え、まわりの山々を眺め
「あそこがナスフェルト峠、向こうはスロベニア・イタリア国境の山に似ているなー」などと指差して話していると、そのご夫婦が声をかけてきます。
「そう、あそこがナスフェルド。あの山のむこうがイタリア・・・私たちのグループは、この道を下ってゲール谷のあのあたり・・・Tropolachまで・・・」「スロベニアの方から来たのか・・・行ったことないので、山がどのあたりかまるでわからないなー」などと説明してくれます。
こちらの皆さん、観光客に気楽に声をかけてくれます。そして知らないことが出てきても、はっきりと「判らない」と言い、嘘はつかないように見えます。このあたりが外国からの観光客に接する基本なのでしょう。日本では外人に声をかけて、もし言葉や場所が判らなかったらどうしよう、だったら他の人が声かけるのを待っていよう・・・と消極的になってしまうところですが。
【6a9.jpg:この3人が居残りの人たち。逆光の山が昨日白く光っていたGartnerkofelガルトナーコーフェル山(2195m)】
【6b9.jpg:待っていたおじさんが話しかけてくる。ナスフェルト峠の方向はあそこ。スロベニアの方向は?わからない】
【6d0.jpg:オーストリア側にこの谷を下るトレッキングルートを行くのだと言う】
10:00、十字架のあるRupertiwegルパーティウェック(1990m)の頂上に到着です。例の先発の人たちもそろそろ出発、靴ヒモなどの身支度。ガイドの人がスティックで周囲の山や谷の方向を指差し、説明をしています。ドイツ語なので説明の詳細はわかりませんが、時々出てくる山の名前・地名などは聞き取れます。僕たちもその説明を一緒に聞いていました。
【735.jpg:十字架のあるRupertiwegルパーティウェック(1990m)に10:00到着。ガイドの人が周りの山々を説明している。ドイツ語で】
突然その説明の中に
「ヤーパン:Japan」という言葉を聞き取ります。ガイドさんがこっちを向き、説明を聞いていた10数人が一斉に僕たちのほうを見ています。皆さんの表情は明らか に興味と親睦で、いやな感じはありません。さっきのコル(分岐点)から僕たちが遅れながらも 付いて来たので、声をかけたようです。
「日本はこっち方向:Japan(ヤーパン) is over there」僕もスティックを地面に向かって指差します。皆さんの 顔の何人かは理解し、残り大部分の人は「何を言っているんだろう」の表情です。
「日本はこの地面の下、穴を掘って・・・まあるい地球の反対側、Mt.富士もこの方向・・・」穴を掘るしぐさに、笑い声が起きます。「Mt.富士山」「日本人」などの声と、英語の質問がいくつか飛んできます。
「どこに行くんだ?」・・・あの峠に戻って、オーストリア国境からイタリア・ドロミテに・・・
「どこを旅行しているのか?」・・・ミュンヘンからレンタカーでスロベニアを経て・・・・
山で出会った仲間どうしの会話がしばらく続き、彼らはあのコル(分岐の峠)に戻っていきました。
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ここからの360度の展望です。雲が湧き出してきて遠方ははっきりとは見えませんが、オーストリア、イタリア、スロベニアの山や谷が見渡せます。明るい緑のアルムにはそろそろ放牧の牛が上がってくる季節です。白いドロマイト質の岩肌に夏山のクライマーが取り付くシーズンも間もなくでしょう。ゲール川が作った広い豊かな谷には歴史と文化が見えるようです。
【540.jpg:東方向:左Gartnerkofelガルトナーコーフェル山(2195m)。その右はオーストリア・スロベニア・イタリア国境のユリアンアルプスだろう。一番右がナスフェルト峠あたり】
【544.jpg:南〜西方向:左がナスフェルド峠でイタリア国境。Karnische-Alpenカルニッシュ・アルペンの岩山がはっきり見えます。オーストリア側はスキーゲレンデ一杯。右の谷がゲール川とその右の山脈がGailtalerゲイルタール・アルプス】
【548.jpg:北方向:Gailtalゲール川の作る渓谷は広い。右のほうにフィラッハがある】
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頂上にあるパノラマの図説板です。オーストリア側の山や村の名前が書かれていますが、残念ながらイタリア国境の方向の説明はありません。
【537.jpg:頂上にある、オーストリア側だけの山名の説明表示】
<パノラマ説明板の部分拡大表示>
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左方向
:Grosglocknerグロスグロックナー(3798m)、Grosvenediger(3660m)、Dreiherrenspitze(3499m)などの山が見えるという。
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中方向
:Hochalmspitze(3855m)、Ankogel(3263m)、Hocharm(3253m)などの山・・・遠くはTauernタウエルン・アルプス。
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右方向
:Latschur(2236m)、Falkert(2308m)などと、右端はGartnerkofelガルトナーコーフェル山(2195m)。
頂上の景色を堪能し山を下ります。下りは気持ちと体力に余裕ができ、高山の美しい花を撮影する時間も見つかります。【
●花の図鑑へ
】【
●峠のDBへ
】
【557.jpg:山を下ります。途中高山の美しい花を見ながら。エリツィアン、ナデシコ科ミミナグサ属。西洋タンポポ キク科・・・・など】
【周辺地図:点線はハイキング
コース(一部想定)】
11:05、Watschigeralmヴァッチゲール・アルムの小屋に戻ります。行きは1.5時間、帰りは1時間弱の散策でした。車に戻りペットボトルの水でのどを潤し・・・峠をオーストリア側に下ります。
<ナスフェルトの峠の分岐点までに戻り、オーストリア・ゲールの渓谷に向かって、なだらかな峠道を下ります・・・・>
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