ヨーロッパ アルプス 峠ドライブ紀行 TOPに戻る この旅のtopへ戻る 前ページに戻る 次のページへ count

ポストイナ鍾乳洞

Postojnska-Jama/Postojna-Cave
ポストイナ鍾乳洞
 世界第二位の規模といわれ、Human-Fish(類人魚)がいる鍾乳洞。ここはヨーロッパ・アルプス、大分水嶺の最東端に位置しています。

 トロッコは怖いほどの速度で、暗い狭いトンネルを走り抜けます。ディズニーランド?お化け屋敷?・・ふざけると骨折するよ!・・このスリルが少年たちにはたまらないのです。
[北村 峠一]      


<2003.6.12(木)>
 ポストイナ鍾乳洞は、街の中心から1kmほどの場所にあり、5〜9月は9〜18時の毎正時に観光コースがあるとホテルで聞き、一番に乗ろうと早めに到着します。一人2,600Sit(≒1,560\)と、この国ではちょっと高めですが、約1時間半でガイド付きのコースですから期待しましょう。この洞窟は「世界第2位の規模」とのことですが、たしかに入口周辺はスロベニアで初めて見るほどの大きな駐車場、たくさんの万国旗、おみやげ屋、高級そうなホテルなどがこの周辺にはあります。(私は今までに富士山の青木ケ原の氷穴、韓国済州島の溶岩洞窟しか経験が無いので、世界第2位とはどんなものか比較はできないのですが)

postojna-jama
【101.jpg:国際的な観光地】

postojna-jama
【110.jpg:左奥の建物がHotel-Jama。一番に行ったので、まだ人がいない】
postojna-jama
【127.jpg:総延長20kmもある
鍾乳洞。3.5kmのトロッコの
あと、1.7km歩く】

postojna-jama
【200.jpg:Pivkaピヴカ川が鍾乳洞に入る口】

postojna-jama
【123.jpg:上部・正面の穴からトロッコへの出入り口がある】
postojna-jama
【204.jpg:人力でトロッコを押した
1872年頃の絵】
 9時出発コースの先頭に並びます。壁にある説明では1819年に開発が始まり、1872年にはトロッコ敷設。長いスカートでめかしたレディが、天井のしょう乳石を見ている絵があります。そのトロッコを案内人が後ろから押しながら説明したのです。130年以上も前から、こんな風に一般の人も見学できる観光地になり、さらに1920年には、ポストイナにオリエント急行も停車しますから、ヨーロッパ中からたくさんの紳士淑女たちも見学に来たのでしょう。

 徐々に人も増え、ドイツ語、イタリア語など色々な言葉の会話が聞こえてきます。バックパッカーの若者たち、お孫さんを連れた老夫婦、校外学習で先生に引率され、緊張気味に静かに並んでいる小学生など・・・100人ほどにもなったでしょうか。僕たちは計算どおりトロッコの先頭の座席に陣取ることが出来ました。

 看板や、入場券に「見学の注意事項」が書いてあります。
(1)「禁煙、カメラ・ビデオ撮影禁止、鍾乳洞の内部を壊したり、持ち出しは禁止」はわかるとして、
(2)「グループから離れるな」は、洞窟で迷子になる人もいるのでしょう。
(3)「トロッコの座席から立ち上がるな」 速度は自転車ほどですが、岩を削っただけのトンネルは狭く暗く。右に左に揺れながら走り、進むに従い照明が点くのですが、手を伸ばすとトンネルの天井に触るほどですから、とても立ち上がりなどできません。
 日本だったら「首がなくなる」と父兄が騒いで、閉鎖になるかもしれないほど、本当に危険です。
 最後に書いてある
(4)「Keep noise to a minimum.騒音は最小限に=騒がないこと」 これはなぜなのでしょう?

 この自然の造形、実に見事です。そして効果的な照明に浮かび上がるトンネル内部は、大人でもワクワクするほど。僕たちの後ろの人たちからの歓声も、何度も岩に響いて聞こえてきます。この洞窟内は年中8℃、トロッコで風を受けるので、ウインドブレーカを着込んでいても寒いほどです。

(注:以下の映像は、2000年11月19日,26日,12月3日「大使の国のたからもの」「スロベニア」(テレビ東京、日曜8:30-9:00)の、ポストイナ鍾乳洞の映像と、現地で貰ったパンフレットからのものです。)
(Webでの紹介は 「スイス・スロヴェニアの旅行情報」【いのうえさん:TV放映された世界各地の旅行情報の解説。)


postojna-jama
【206.jpg:トロッコに乗って。頭すれすれの洞窟の中を走る。周囲の鍾乳洞がところどころ照明されている。(「大使の国のたからもの」から)】

 トロッコを降りたところで、スロベニア語、英語、ドイツ語、イタリア語ごとにガイドの説明を聴きながら、1.7kmを約1時間歩いて見学です。僕たちの入った英語のメンバーは20数人、ドイツ、イタリア語のグループより多めです。イギリス人に見える人はわずかなのですが、東欧系の人たちも英語で説明を受けています。さらにスロベニア語にいたあの地元の小学生たちも、いつのまにか僕たちのグループの後ろに、先生に率いられておとなしく英語の説明を聞いています。(鍾乳洞の解説は事前に学校で教えてもらっているのでしょう) 英語で旅行できる国が急激に増えていることが実感できます。

 天井からしたたり落ちる水滴でできる鍾乳石は、10年でやっと約1mmとの説明なので、無数にぶら下がっている20cmほどの「スパゲティ」は、2000年前、キリスト誕生の頃のものなのです。「ソフトクリーム」とか「ブリリアント」などの名前の鍾乳石は、まるで色のついた氷で出来ているような素晴らしさです。

postojna-jama
【235.jpg:3500m先でトロッコを降り、スロベニア語、英語、ドイツ語、イタリア語のグループごとに、約1.7kmを歩いて移動しながら説明を聞く(「大使の国のたからもの」から)】

postojna-jama
【244.jpg:スパゲティ、ソフトクリーム、ブリリアント、などの名前がついている(「大使の国のたからもの」から)】

 この洞窟には「Proteus-Anguinus、別名Human-Fish(類人魚)」という白い四足のへびのような生き物が住んでいるとガイドブックには書かれていました。多分見ることはできないのではと思っていたのですが、見学コースの暗い水槽の中に数匹。こんな真っ暗な、食料すらなさそうな場所に生きる、本当に不思議な動物に出会うことも出来ます。

postojna-jama postojna-jama
【01.jpg:大きなホールもあり、照明が効果的(パンフレットから)】 【02.jpg:Proteus-Anguinus、Human-Fish類人魚ともいう不思議な生き物を実際に見ることができる。(パンフレットから)】
postojna-pred-skocjan-map
【ポストイナ、プレット、シュコシャンの
鍾乳洞の位置と、そこに流れる川。
赤の線は大・分水嶺(左は地中海に、右は
ドナウ川に流れる)】 ●クリックで拡大


 見学の最後に、例の懸案の質問をガイドさんに聞きます。
「ここの水はアドリア海に流れているのですか?」
 彼はよく聴いてくれたとばかりに説明してくれます。
「ここから北東のUnecウネッツ付近で一度地上に出、さらにまた地中に入り、Ljubljanaリュブリャーナ川へ」
「その先は、サバ川からドナウ川へ行くんですね」
「そう、合流して川の名前を変えながら黒海に行くんです」
この付近の地図を見せて、具体的に場所を指してもらいます。

「アルプスや、分水嶺に興味があるので・・」と話すと、
「この付近では、数キロ西にあるPred-Jamaプレット洞窟や、世界遺産のSkocjanske-Jamaシュコシャン鍾乳洞はアドリア海に流れているので、この付近のWater-Border分水嶺は地図のこのあたりを斜めに走って・・・」

 地上に戻った出口で、ガイドさんは事務所から何種類ものパンフレットを渡してくれます。昨日わからなかったCerknisko jezeroツェルクニ湖の水も、Planinsko poljeプラニン湖でこのポストイナの水と合流してドナウ川に行くこともわかり、この付近の大・分水嶺の状況がかなり整理できました。やっぱりこの後、分水嶺の向こう側「Predjamski-Gradプレット鍾乳洞・城」に行くことにしましょう。

postojna-jama
【226.jpg:帰りのトロッコも暗いトンネルの中。前列の小学生の男の子たちは、奇声をあげ楽しむ。僕たちとの冗談の会話がまた楽しい(「大使の国のたからもの」から)】

postojna-jama postojna-jama
【137.jpg:このガイドさんに分水嶺の質問を。たくさんの資料を貰う】 【130.jpg:出口から、明るい外に出ます】


 洞窟からまたトロッコに乗って帰ってくるとき、僕たちは、小学生の男の子たちの真後ろの席になりました。男の子ってどこの国でも落ち着かないですね。鍾乳洞に入ってくるときはおとなしかったのに、もう飽きてしまって、頭上の岩に手を伸ばして触ってみたり、わざと奇声を上げて。まあこれだから男の子は可愛いのですが。

 こちらも暇なので、ちょっと遊んでやろうと「スパゲティ・・・ハリーポッター・・・」などと前の子に声をかけます。それが前のほうに伝わっていき、今度は前のほうから伝言ゲームのように、「チーノ?、チン?」と言っているのが聞こえます。中国人だと思っているらしいので、「Japanヤーパン」、「TVアニメ」「ドラゴン・ボール」などという言葉を返してあげます。昨日の宿で、なつかしい日本のアニメが、日本語のまま、字幕がスロベニア語で流れていたのです。

 そのうち前のほうの子供から「what-are-you-doing何をしているの?」という英語が伝わってきます。そういえばさっきの見学のとき、この子供たちと先生が、僕たち英語のガイドの話を近くで聞かせていたのを思い出します。こんな風に英語や、各国の言葉を自然に覚えていく環境が、この地続きのヨーロッパの国にはあるのがわかります。まして2004年にはEU加盟ですから。

 そしていつの間にか、トロッコがライトアップされた奇岩や、急カーブの場所で、子供と一緒になって奇声を上げている自分を発見します。入場時の注意事項、(4)「Keep noise to a minimum.」 これは、こんな僕たちに向かっての注意事項でした。

postojna-jama
【164.jpg:女の先生に引率された小学生たち。寒かった洞窟の中から、暑い太陽の下に出てあわててコートを脱ぎ、パンやアイスクリームをほうばる】

postojna-jama
【142.jpg:この男の子たちが、トロッコで僕たちの前に座っていた子たち。真っ暗の中、ちょっと冗談の話を掛けたら、喜んで乗ってきて、楽しかったですね。正面の1819年と書いた入り口、この洞窟の開発が始まった年なので、当時の入り口でしょう】

●ポストイナ鍾乳洞と関連する歴史:
・1818年、洞窟の調査開始。1819年開発が始まり、オーストリア皇帝が訪れる。
・1872年、洞窟内にトロッコが敷設され、観光客も多数来る。
・1920年、シンプロン・オリエント急行が、パリ〜スイス〜ベニス〜〜トリエステ〜ポストイナ〜ザグレブ〜イスタンブールのルートで走り始める。
・1929年、第一次大戦後ユーゴスラヴィアが誕生。ポストイナはイタリアに。(ポストイナは国境駅)
・1945年、第二次大戦後、ユーゴスラヴィア連邦建国時、ポストイナはユーゴに。
・1991年、スロベニアはユーゴスラヴィアから独立。

<楽しかった小学生たちと「さよなら」をし、あのガイドさんの分水嶺の説明の「Predjamski-Gradプレット鍾乳洞・城」に向かうことにします・・・・>
●ご意見・お問い合わせ・情報・何でも・・・「峠の茶屋・掲示板」でお待ちしています。EU-ALPS.com  旅のGET旅のGET
ヨーロッパ アルプス 峠ドライブ紀行 TOPに戻る この旅のtopへ戻る 前ページに戻る 次のページへ  

 ☆booking.comhttp://www.booking.com/【スロヴェニアのホテル:地図などから選択】