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Valtice ヴァルチツェ
【r668.jpg:世界遺産のValticeヴァルチツェ城。左側がホテル】

Valticeヴァルチツェ:世界遺産の城ホテルに泊まる

 サービス業でもこんなに違う? これは個人経営と国営企業の差? それとも・・

チェコ:モラビア地方】 [北村 峠一].(Kitamura)      


●朝食時・・

 10年ぶりに入ってきたチェコ、その国境近くにある世界遺産の城ホテルは、ツインルーム朝食付2人で1泊1290KCコルナ(約6.5千円)と格安なのですが、何人かの従業員の態度はちょっと理解できませんでした。

 何が変かと言えば、朝食にレストランのドアを開けたときの20歳代のウェイトレスの応対。今までの旅では、どんな田舎の宿でも、客の顔を見ると笑顔があって、
「おはようございます」の声が聞こえたのです。チェコですから
「ドブリーデン」とか。
 ところがここのウエイトレスは、僕たちが入ってきた姿を見るなり無言のままさっと厨房に戻ってしまいます。そして何か奥のほうでボソボソと同僚と話をしている風。しばらくしてやっと他の従業員が注文を取りに来るのです。

Valtice ヴァルチツェ Valtice ヴァルチツェ Valtice ヴァルチツェ
【r512/580.jpg:城ホテルの朝食は、毎日同じ材料を規則どおりに作った感じ:6/14、6/13】 【r581.jpg:右:ホテル・フロントのお嬢さん】

Valtice ヴァルチツェ Valtice ヴァルチツェ
【r473/r477.jpg:近くのレストラン「Albero」の料理はバラエティ。チェコのビールはうまい。
やはり民間経営なのか壁飾りなどもしゃれている】
 言葉の問題なのでしょうか? 朝食はどこもパンとハム、チーズ、ジャムで、セルフサービスか客別に皿に盛ったものを運んでくる形。ここでは後の形らしいのですが、どちらにしろ、
「飲み物は何にしますか」と聞くだけなのです。

 外人だからといって特別な単語が必要なわけではないので、
「まずは笑顔で何か話しかければ、どこの国でも通じるのに」くらいに思っていたのです。

 さらになんと、2日目の朝食でも同じ光景だったのです。

●共産圏・国営企業・・

 城を一歩出たところにあるレストランでは単語でのやり取りだけで順調に行き、先ほどのようなことは感じなかったので、早くから民営化された個人経営の店に比べ、世界遺産の城ホテル、まだ国営的企業は一部のエリート階層の人達は英語が話せても、たくさんいる一般の従業員は母国語以外はまだ出来ないのだな、くらいに思っていたのです。



 さらに東西どこでも同じと思っていたサービス業で必須の<お客様は神様、笑顔での接客>は実は違うようです。社会主義崩壊から17年も経つのに、まだまだ浸透していないなどとも考えていたのです。

●ベトナム人労働者・・

 ところが今回の旅の最後、オーストリー・アルプスの麓の宿で知り合ったチェコ人夫婦との会話で、
「共産圏の時代、たくさんのベトナム人が出稼ぎ労働者としてチェコに来ていた。今でも小さな家に大人数で住み、安っぽい衣料品を街角で売っている・・」などと、なにかベトナム人への差別的な言い方があったのです。

 そして帰国後読んだ『チェコとスロバキア・・歴史と現在』大鷹節子著(元・駐チェコスロバキア大使の奥さん)の中で、
「チェコスロバキアは社会主義体制の先進国として、ベトナムから年3万人の労働者を受け入れていたが、人手不足のため彼らは単純な下層労働に従事していた。2・3年働き貯蓄して帰国していくのだが、仲間同士の喧嘩が絶えないことや、当時入荷が少なく自国民すら入手困難だった自転車を、帰国土産に強引に持ち帰るなどでこの国の人達の反感を買った。自分たち大使館の従業員も町での買い物などで最初ベトナム人と思われたようで、かなり差別的な態度を受けていたが、日本人だと判るとがらりと態度が変わった」とありました。私たちはいい国に生まれたものです。

Valtice ヴァルチツェ
【2003年、スロベニア・ボヒニ湖の朝食時:食卓のプレートに「JAP(日本人)」と書いてある。319号室だけでわかるのに?】
 そういわれると思い当たるのが2003年に旅したスロベニア。ここも同じような旧社会主義の国。そのボヒニ湖の大きな国営と思われるホテルでも、日本人だと言うことが判っているフロントの人の接客は変らないのに、日本人だと知らないレストランや、付属のインフォメーションの従業員、特に女の人の妻への態度が極めて横柄だったことを思い出しました。ベトナム人に対する旧東欧の人達の嫌悪感のようなものが判ったような気がします。

 当時、僕たちの朝食のテーブルにわざわざ「JAP」と書いたプレートがあったことは、
「あんな下層のベトナム人になんで食事を運ばなければいけないんだ」という差別意識を持った大多数の従業員に、
「いや、ここに座っているのは日本人だよ」ということを、フロントの管理的社員が教えていたのかもしれません。

●かつてここは 「リヒテンシュタイン公国」 の支配地だった

 なんとチェコのこの一帯は、13世紀以降、第一次大戦後の1918年まで「リヒテンシュタイン公国」の支配地。あのスイスとオーストリーの間にあるこの小さな国は、隣国ハプスブルク帝国の家臣として勢力を広げ、宗教戦争での新教徒抑圧などの功で現在のチェコ一帯を家領としたのです。そしてこの飛び地にバロック様式のヴァルチツェ城を、8km北にあるレドニツェにはネオゴシックとルネッサンス様式の城。さらに周囲200平方kmもの広大な場所にフランス庭園、バロック様式などの各時代流行の庭園や建物を多数作ったのです。
 第一次大戦で手放した領有地は、母国の12倍もあった(一時は33倍も所有)ということですからものすごい財力だったのです。
 そのリヒテンシュタイン公国は、1993年1月のチェコとスロバキアが分離し西側との貿易協定を結ぼうとしたとき、チェコに没収された当時の財産返還を求めて長い交渉を行った、という記事を読んだこともありました。


Valtice ヴァルチツェ
【r462e.jpg:世界遺産Valticeヴァルチツェ城。左がホテル、右が聖母マリア教会】

Valtice ヴァルチツェ
【s766.jpg:屋根やトタンのメンテナンスまではまだ行き届かない:部屋の窓から】
Valtice ヴァルチツェ
【s762e.jpg:Valticeヴァルチツェ城のホテルの裏には、花壇があって】

Valtice ヴァルチツェ
【r505e.jpg:Valticeヴァルチツェ城のホテルの裏側は塗装なども】

Valtice ヴァルチツェ
【ホテルの責任者か?】

Hotel HUBERTUS
フヴェルトゥス
 (☆☆☆)

URL:www.hotelhubertus.cz
住所:691 42 VALTICE, Czech Republic (Zamecka通り)
Tel.: +420 519352537 Fax: +420 519352538
E-Mail:
 hubertus@valtice.cz


・世界遺産ヴァルチツェ城の左側の建物の中にHotelがある。
・ツインルーム、(朝付)1290KC(約6.5千円)/2人、と近くの他の宿に比べ高くない。
・専用駐車場があるが、チェーンを南京錠で止めるクラシックな形式。

チェコで利用したホテル一覧
Valtice ヴァルチツェ
【r492.jpg:Svobodyスヴォボダ広場に面した
役場と郵便局】

●経営者は・・

 朝食後のロビーで、ホテルの責任者風の男の人が英語で話しかけてきました。
「チェコに来たのは初めてか、どのくらい旅行しているのか」などとフレンドリーです。今から考えると、あのウェイトレスが与えたかも知れない不快感の、侘びの気持ちがあったのかもしれません。

 出発の朝、絵葉書を出した郵便局でまた会い、写真を撮らせてもらいましたが、
「また来てくださいよ」とサービス業の鏡の会話。そして多分フロントに居た英語を話した女の人も、雰囲気的に似ていたので娘さんかもしれません。

 農場も含めすべて国営化されていた社会主義の時代。以前の持ち主に順次戻され、民間での経営に変わって来ているのですが、ここにある建物はかつてはリヒテンシュタイン家の所有物、今後とも公営で運営、維持していかなければならないのでしょう。

 この輝くような世界遺産は、観光客を引き寄せるのに十分なはずなのですが、なかなか宿泊客やお土産などを買ってくれる客は少ないようで、僕たちが見た泊り客は1・2組だけと経営は厳しいのです。それにあまり商売っ気や、改善などの意気込みも感じられないのは、日本のお役所経営の設備と一緒です。

 ホテルの部屋は歴史的建物の関係もあって大きな改造は出来ないのでしょう、部屋も狭く、窓も小さいのです。さらに内装や調度品なども西側の標準以下。建物もパンフレットなどに写らない裏側まではまだまだ改修が届いていないのが現状。10年後、フロントに居た娘さんが管理者になった頃、またあのレストランで朝食を取ってみたいですね、どんな風に変わっているかを見に。

Valtice ヴァルチツェ
【r466e.jpg:サッカーグランド数面もあるSvobodyスヴォボダ広場。 正面はNanebevzeti-Panny-Marie聖母マリア教会(内部には金網では入れない)。右手にインフォがある】

Valtice ヴァルチツェ
【r495.jpg:町のインフォメーション】
レドニツェLednice
【r566.jpg:Valtice:Nemocnice Milosrdnych Bratri病院】

<関連するサイト>

 ○http://www.breclav.info/【ZAMEK VALTICE観光ガイド】
 ☆あのね【チェコ観光局:モラヴィア地方のお城】
 ○http://members.aol.com/penheligan/【国境の鉄条網のあるチェコ:オーストリーの旅行記】
 ○http://www.gastronews.cz/【Valticeワイン情報】
チェコウェブリング

<関連書籍・地図>

本:『チェコとスロバキア―歴史と現在』大鷹節子著、サイマル出版会
チェコに関する書籍・音楽など
チェコに関する洋書


<チェコのビール>

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<チェコのワイン>

チェコのワイン検索

<関連HOTELなど>

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<明日はこの周辺の世界遺産「Ledniceレドニツェ」の城や庭園、さらにこの周辺の村に・・>
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