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Col des Aravis
【r112.jpg:アラヴィ峠のレストラン:Les Rhododendronsロードデンドロン】

Col des Aravisアラヴィ峠(1498m) -1

古い絵葉書とレストラン・ロードデンドロン 【●峠のDB
1927年建造、5年前改築・・が、立地と競争相手で・・(compte d'un voyage)

ローヌ・アルプ地方オート・サヴォワ/サヴォワ県】   [北村 峠一].(Kitamura)      


 この旅で一番楽しみにしていた、古い絵葉書のあのアラヴィ峠に到着しました。

 ここ丸4日濃霧と小雨が続き、数m先しか見えない6個所もの峠道を、崖に落ちないための白線を頼りにのろのろ走り、峠の標高が書かれたプレートだけを撮影するドライブにうんざりしていたのです。平均気温も日本の首都圏より10度以上低いのですからまるで冬、気持ちも滅入ります。

Col des Aravis
【Aravis峠周辺地図:クリックで拡大】
 昨日、直前のN.D.de Bellecombeノートルダム・ディ・ベルコンブ村のインフォメーションのお姉さんから、峠にホテルが無いことを確認し、このまま霧のアラヴィ峠に行っても仕方ないと村に2泊の宿を取ったのです。今朝も曇り空、山の上も雲の中。ここの宿のかみさんも昨日の宿と同じく、
「午後になったら晴れてくると思うけど」と営業用語で送り出してくれたのです。
 南20kmほどにある、冬季オリンピック開催のAlbertvilleアルベールビルの街を散策していると、青空が少し見え始め昼食も食べずあわててこの峠に来たのです。

 峠周辺には数軒の建物があり、目的の「Chalet Hotel山小屋ホテル」はまだあるのだろうかと少しまわりを走ってみます。 絵葉書では教会とは道路向かい。周りの風景などからどうやら余り人気の無い、日当たりの悪いレストラン(R2)がそれらしいのです。そう思って改めて眺めると、屋根に「Les Rhododendrons」と看板があり絵葉書にある文字とも一致しています。
Col des Aravis
【v009.jpg:峠の標示板】

アラヴィ峠の建物
【峠の建物配置】
Col des Aravis
【v0932.jpg:左から、人気の無いレストラン(R2)、教会、日当たりのいい・客の多いレストラン(R1)】
アラヴィ峠の古い絵葉書-5
【絵葉書5:教会と山小屋ホテル】

Col des Aravis
【4099.jpg:Chalet山小屋(R4)と牧場】

 時間は午後1時半、昼食の時間は若干過ぎたとはいえレストラン内部は窓際に客が4人だけ、静まりかえった店内にマスターも暇そうです。
「コーヒーを」 と言うと奥のイスのどこでもいいと指差します。一番奥、全体が見渡せ、窓から山の見える席に座ります。 妻が
「大きなコップに少しのコーヒー、冷たいミルク」 と英語で何度も説明した言葉は、このフランス語しかわからない45歳くらいのマスターに理解できたでしょうか?

 さて、絵葉書の話をどう切り出しましょうか。持参したのは、インターネット・ページの印刷だけ。理解できるかなー、こちらも片言の英語だけなのです。
 やはりマスターは理解できていませんでした。持ってきたのは「小さなコップのコーヒー=エスプレッソ」と「市販の小さなコーヒー用ミルク」。 妻が「まあいいよ」 と言うので・・

 最初の印刷ページ(地図とモンブラン=絵葉書1)を開いて、切り出します。
「これはモンブランですか」「そう、あそこの雲がかかっている山がモンブラン」 マスターは事務的な答えです。

 ページをめくり「ツール・ド・フランス、ジグザグ道、雪山=絵葉書2.3.4」を見せ、
「これはツール・ド・フランスと峠道の絵葉書。場所はどの辺りですか」 と聞きますが、
「ツール・ド・フランスだろうね? あとはわからない」 のようなことを言っています。ちょっとウサン臭さそうな態度も感じます。
 それはそうです。東洋人の夫婦が突然、読めない文字の印刷物を見せ、そこにある古ぼけた写真を指差し、何の目的かわからない質問をしてくるのですから。

 そろそろ引き上げようかというそぶりも見えたので、次のページ(教会と建物=絵葉書5.6)を開き、
「この教会があそこにあって、この屋根がここの建物ですね?」
「おっ」 というような空気が伝わってきます。脇に立っているので表情などは見えませんが。
「そう、このレストランの建物の写真だ、かなり古いね」
「絵葉書なんですよ。多分写っている自動車などから1920年代だろうと思うのですが。このレストランは何年に建てられましたか」
「よく判らないから聞いてみるよ。この絵葉書はどこにある?」
「知り合いの女性画家が、パリの蚤の市で入手したんです。今この絵葉書は東京にありますよ」

 次のページ「ホテルの内部と紋章=絵葉書8.9」を開いて
「これがレストランの内部風景。ここにChalet Hotel des Rhododendronsとありますが、今ホテルはやっていないんですか」
「ホテルはもうやっていない。この写真の内装は5年前改装するまでと同じ、よく覚えているよ」
 Rhododendronsロードデンドロンの発音のしかた等を聞いた後、当時撮影したと思われる位置に二人で立ちます。暖炉のデザインは当時と変わっていますが、その右側の白い部分は奥へのドアだということも判ります。デジカメで絵葉書と同じアングルで撮影。<*1>
「マスターを1枚撮影させてください」 脇に立ってもらいさらに1枚。<*1>

アラヴィ峠の古い絵葉書-8
【絵葉書8:当時のレストラン内部。
ビデオ映像は部屋の左奥から】
Col des Aravis
【v049.jpg:店内1。暖炉の周辺はBarバー。右奥:レストラン】

Col des Aravis
【v038.jpg:店内2。左:レストラン。右:窓から見る屋外のテラスと遠景のモンブラン】

 コーヒーを飲みながら、ビデオカメラで部屋の中を一周撮影。東の窓から見えるモンブランにかかる雲が流れ、頂上がもうすぐ見えそうになるのですが、また雲が湧いて・・。ズームアップで撮影などしていると、カウンターに戻ったマスターの若干上ずった声が聞こえます。
「東京」「古い写真」「絵葉書」などの単語が、ちょっと太り気味の30歳後半のマダムに向かって、しばらくすると近くのお客さんとの会話の中にと、何度も聞こえてきます。

 古い写真が店内に掲示されていることは、この地に長く基盤を作ってきた歴史ある店舗だという誇りになるのです。バルスロネットの宿や今回泊まったフランス内の宿でも。隣のイタリア・ドロミテのホテル、オーストリアなどでも大きく引き伸ばした写真は誇らしげに展示してありました。
 そんな写真がこのレストランには残っていないようです。そして後発の、道路向かいの日当たりのよいレストランに対抗できるのは「歴史」だけかも知れないのに、大改装で大事な宝をなくしてしまったのかもしれません。

アラヴィ峠の古い絵葉書-1
【絵葉書1:モンブランと花】
Col des Aravis
【v068.jpg:同一位置の窓辺からのビデオ映像:若干雲もあるが】

 モンブランのまわりの雲が少なくなり、頂上が間もなく見えそうです。そろそろ清算して外に出ようと手を上げますが、マスターは話に夢中なのか気がつきません。レジに行きコーヒー代4eur(約500円)を払うと、
「この建物は1927年建造とのことだ。写真を送って欲しい。住所はここ、名前はJean。11月末で冬季休業になる」 と店のカードに書いてくれます。名刺と、少しメモを書き込んでしまった日本語の例のプリントを渡し、
「帰国したら絵葉書のコピー送ります。このURLにはこの本文があります。世界中の人がインターネットでこれを見られますよ」 など、そこに居た英語のできるマダムに説明します。そして今度はマスターと私の二人のショット。<*1>
 店を出ます。晴れやかな、暖かい日差しとモンブランが迎えてくれ、展望台へ歩くことにしました。

 その後の旅先で入手したフランス・アルプスに関する本の「ツール・ド・フランス」や「Route des Grandes Alpes:フランスアルプス縦断ルート」の歴史記事には、このアラヴィ峠周辺と「小野塚さんのツールの絵葉書2」などの写真が大きく掲載されているのを見つけました。
 マスターに絵葉書のコピーを送るとき、あの古い絵葉書に関する記事に「フランス語翻訳」を追記・印刷して同封してあげよう。そうすればマスターにも、掲示の絵葉書を見た人たちにも、このレストランの長い歴史がわかるのではないだろうか。さらにその絵葉書が、どんな経緯で日本に渡ったかなども。

 そしてたくさんのお客さんにこの店に立ち寄って欲しい、あの人の良さそうなマスターもきっともう少し商売熱心になるだろうし・・などとドライブ中、妻と話ながら旅を続けたのです。
「あの資料使って、マスターに一生懸命説明しているシーン、前の席からから見ていても本当に充実して楽しんでいるみたいだった」
 妻にそう言われ、改めてこの古い絵葉書を入手した小野塚さんの「選択眼」に敬意を感じ、それを見せてもらったことから旅が内容あるものになったことなど、本当に感謝します。

Rhododendrons●宿の名前になっている「Rhododendronロードデンドロン」は、
・ツツジ科の樹木の花。、生育地800-2500m、高さは20cm-1m。日本のシャクナゲ、レンゲツツジなど山地の花と類似です。
・7-8月に開花しますが、山の斜面一杯に赤/ピンクの花が咲くシーンには、まだ出会ったことはありません。また花が咲く1月ほど前に遠くから見ると「まるで山肌のカサブタ」と僕たちは表現していますし、秋に入ると一部の種類は紅葉し、それぞれ山の表情を変化させます。
・独名:Alpenroseアルペン・ローゼという名がよく知られていますが、エーデルワイスゲンチアナとともに、アルプスの3大名花です。
<*1>
 撮影したデジカメデータをMOにバックアップする時トラブルがあったらしく、現在リカバリー作業中ですが、これらの記念写真を含む約半数が消えてしまったようです。(以下のBlogメモ参照) 大変残念ですがマスターにはお詫びの手紙をするつもりでいます。そして2・3年後にはきっとレストラン・ロードデンドロンを再訪するつもりでいます。

<Les Rhododendrons:レストラン・ロードデンドロンの紹介>

Col des Aravis  Col des Aravis
【r111.jpg:店の北面】        【店のカード:】
 ・住所など:Col des Aravis, 74220 La Clusaz, tel/fax:04 50 02 41 50
 ○http://www.tourisme.fr/【LA-GIETTAZ村(サヴォワ県)の観光ガイド】
 ○http://www.alpesimmobilier.com/【La-Clusaz(オート・サヴォワ県)の観光サイト】
 ○http://www.agoralp.com/【Aravisアラヴィ峠、Les Rhododendronsに立寄った記事】
 i:Route des Grandes Alpes「アルプス縦断ルート」
アラヴィ峠のレストラン

●三輪裕子さんのブログで

 子どもの本の作家・三輪裕子さん が2011年、このアラヴィ峠に旅し、周辺の山歩きなどをされ、ブログにその紀行を書かれています。
「紅蓮(ぐれん)のポケット:アラヴィス(アラヴィ)峠の道」
 その中の写真に写っている例の『レストラン・ロードデンドロン』の2011年の外観は、2005年の時とかなり雰囲気が変わっています。
・まず看板に書かれたレストランの名前は「Les Rhododendrons」から、「Les Rhodos」と略称(?)に。
・さらにサヴォワの旗をたくさん貼って

・・もしかすると、経営者も変わったのかもしれません。この6年の間に・・あのマスターも?・・(2011.8 追記)

<アラヴィ峠の周辺を散策、モンブラン展望台まで・・・>


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