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kastelrouth
【da9.jpg:陽気な宿のマダム。軍服とサーベル姿の男たち】

Kastelruth/Castelrotto カステルルート/カステルロットの街

雨の中、陽気なマダムの宿に。この軍服姿の催し物は「Herz Jesu Sonntag:イエスのハート、炎の休日」とでも訳すのでしょうか。

ドロミテ:Sassolungo(Langkofel)サッソルンゴ・エリア】  
[北村 峠一].(Kitamura)      


 雨でけぶるローゼンガルデン(バラ庭園)を下ったイザルコ渓谷にも、まもなくパラパラと雨が降り始めます。
「これから2日間、どうせゆっくりするのだから、宿に閉じこもって・・」とは行かないのが僕たちの旅、やっぱり動き回りたいのです。

 途中のわき道に入り、景色の良さそうな、いい宿はないか? と探し、ここはと立ち寄ったホテルは、珍しく満室。6月19日土曜日、旅のシーズンが始まったようです。翌夕方、その宿の前は観光バスとドイツ系らしいたくさんの登山姿の人たちが居ましたから、ここを基点にハイキングだったのでしょう。

 Kastelruthカステルルート(ドイツ語)/Castelrottoカステルロット(イタリア語)の街に入りました。ここは7年前の祝日、民族衣装のおばさんたちを何人も見かけた町。その教会の駐車場には、乗用車・観光バスなどが次々と入ってきます。やはりシーズンの土曜日の活気、やっとスペースを見つけ駐車。宿を見つけるまでに違約金取られてはいけないと、1時間0.8Eur(≒100\)のチケットを買いましたが、なんと有効期限があさっての1時間後。土日は無料だったのです。
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【d32.jpg:Hotel-Mayr】【Alpe-di-Siusi付近のMap:クリックで拡大】

 さて部屋探し。教会広場の周りの宿は高そうなのでパス、道路を隔てた奥まったホテルはどうでしょう。
「2泊? 明日は空いているんだけれど・・」英語をウエイトレスに通訳させ、そのマダムはどうしようかと一瞬考えている様子。シーズン中はたくさん稼がなければならないのです。ハーフペンション(朝夕食)の料理は大量作成ですから、2人分は実質利益。なんとかしたい・・と。

「ちょっと待ってて」 ウェイトレスにどこかに行かせ、数分後、帰ってきた娘となにやら一言二言。
「インデペンデンツの部屋でいいか」どうやらIndependent独立の部屋。食事だけホテルのレストランに来るなら、連続2泊可能とのこと。この娘と別棟の部屋を見に行くと、そこは長期滞在型の2部屋タイプ、ゆったりと使えラッキー。値段も52eur(7千\)/人日・2食付と町の中では安いので決めます。どうやらこの棟はマダムのおばあさんの家、その一部がピークシーズンの貸室(アパートメント)のようでした。
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【d25.jpg:初日の夕食:サラダ、スープ、チキン、デザート】 【d34.jpg:2日目の朝食】

 このマダムは陽気なところがお客に受けているのでしょう。食事のときお客のところを回って会話し、必ず笑いをそこで作る特技があるのです。

 ただし僕たちに向かって茶化した東洋語(?)、
「・・チャッ・・ちゅ・・チェ・・」という風な、僕たちが聞くと中国語か韓国語のようにも聞こえる物まねは、周りの人たちには受けても、日本人には受けませんでしたね。

 食事は完璧に大満足。ドイツ・オーストリア国境に近いイタリアの観光地のシェフの腕に、はずれはありません。

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【db1.jpg:2日目の夕食:サラダ、サーモン、リゾット、ビーフ、デザート】

<●KastelruthのHotel Mayr関連>


http://www.hotelmayr.com/【KastelruthのHotel Mayr】
・住所など:family Mayr/ Via Marinzen 5 、 I-39040 Castelrotto (BZ) 、Tel. 0471 / 70 63 09、 Fax 0471 / 70 73 60

●「利用した宿紹介:私のお勧め度・女将さんのことなど」
私のお勧め度:4.5

・ミシュランガイドに登録のレストランだと、後で読者の方から教えていただきました。



−−−−
 昨夜からのみぞれ混じりのひどい雨は、朝になっても続いています。傘をさして町の広場に出て見ますが、あの宿泊客たちも、この天候に山に行くのをためらい、きっとまだ部屋でのんびりしているのでしょう、道を行く人もほとんど居ません。南に雨雲の間から時々シルエットで見えているのがSciliar/Schlernシリアル(2564m)、あの見事な台形とトンガリの山には今回、お目にかかれ無いかもしれません。

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【d31.jpg:雨。宿の部屋から見る町の中心交差点】【d38/d39.jpg:街の中の壁絵】

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【dp4.jpg:街を西から見る。この街道が1997年に走ったウルリッヒからボルツァーノ(右)への道。後ろはシリアル山】

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【103.jpg:教会(右)に向かう人たちと、広場のあちこちにたたずむ民族衣装の男たち】

 9時前、教会に向かって何人もの人が集まってきました。正装した老人、チロリアン衣装の若い女性、まるでスイスの衛兵のような赤と緑のチョッキの人。そして黒ずくめの制服、羽の付いた帽子にサーベルを持った男たちが教会前広場に集まり始めます。

 教会の入り口においてある「Kastelruther-Pfarrblatt:教区教会新聞」のチラシを見ると「Herz Jesu Sonntag:Bundsfest des Landes Tirol:ハート・イエスの休日:チロルの祝祭日」の週間スケジュールがあり、今日日曜の9時からは「Festgottesdiest:祭礼」とあります。どんな催しものなのでしょう。

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【165.jpg:町の人々が、正装して集まってくる】

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【145/148.jpg:しろ・黒の羽毛と赤い花の付いたカウボーイハット風の帽子、黒の制服と赤・緑のチョッキ】

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【132.jpg:いかめしい服装で、サーベルまで持っているが、かわいいところもある】

 9時の鐘が延々と鳴り響くなか、旗を持った軍隊のような隊列が、教会の中に入っていきます。そしてミサが始まりました。ちょうど1週間前の日曜はアゴルドで「聖体節の行列の祭り」に出会いましたが、当然この町でもあったはず。毎週日曜日にこのように行事があるのでは、観光客にはうれしくても、地元の人たちにとってはちょっぴり大変そうですね。

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【1c9.jpg:9時になると、この隊列が教会の中に入っていく】

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【de82.jpg:Herz Jesu Sonntagのかがり火】
 【de8.jpg:夕闇の中で出会った観光客】
 この行事が何なのかは、その日の夜の散歩で見た「大文字焼き」のような「ハート型の山のかがり火」と、そこで出会った観光客との会話でわかってきました。
「昨夜は花火がたくさん打ち上げられてきれいだったよ」 実は昨夜は、別棟で早く寝たのでその物音に気づかなかったのです。
「あの火はハート・マークなんだ。チロルだけの行事だよ」

 帰国後、辞書とWebなどで調べたところ、
「Herz Jesu Sonntag・・イエスのハートの炎の休日/キリストの胸の火の日」とでも訳すのでしょうか。チロル独立運動のシンボル的な行事のようでした。

 1796年から1809年のナポレオン軍(フランスとババリア=南ドイツ)によるオーストリアへの侵攻に対して、南チロル出身のAndreas Hoferアンドレアス・ホーファー(1767-1810)が率いるチロル軍は激しく抵抗し、幾度もチロルを守ったのです。しかし結局処刑・敗退、皇帝の娘マリールイズを成り上がりのナポレオンに嫁入りさせるのです。

 ホーファーの軍は戦いの前に「Holiest Heart Jesu:聖なるイエスのハート」の誓約をし、打ち勝ち、山で高々と火を燃やしたと言います。最初にその日を燃やした、聖体節の後の日曜日を「Heart Jesuの休日」と決め、今でも南チロルの19の山にハート形の炎が燃やされるのです。【●アンドレアス・ホーファー:参照
−−−−

 教会墓地の一角に、第一次大戦の慰霊の礼拝堂があり、悲しむ家族・同僚の絵とともに、鉄かぶとの賽銭入れが置かれていました。ナポレオンが失脚した1815年、チロルはオーストリアに戻りますが、第一次大戦後の1918年、チロルは南北に引き裂かれ、ここ南チロルはイタリアに割譲されたのです。
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【d43.jpg:教会の墓地】 【d47.jpg:第一次大戦の慰霊の礼拝堂と鉄かぶと】

<Kastelruth/Castelrotto カステルルート/カステルロット 付近のサイト>


 ○http://www.hotelmayr.com/【KastelruthのHotel Mayr:泊まった宿:陽気なマダムと絶品料理】【●ドロミテ・エリアで利用した宿紹介
 ○Festgottesdienst【Bilder Festgottesdienst 700 Jahrfeier:700周年の礼拝のたくさんの写真】
 ○http://www.castelrotto.com/【castelrottoのガイド】
 ○http://www.kastelruth.org/【kastelruthのガイド】
 ○
http://www.dolomites.cc/sciliar-see.htm【1756-58 年に造られたCastelrottoの教会】

 昼過ぎ、雨が小降りになり、シウージまで往復しますが、一面季節外れの雪。雲が一杯で見晴らしが利きません。 ところが夕食時、レストランから見える空の青と、北東に輝く白い雪山に引かれ、急いで夕方の散歩に出かけます。

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【db6.jpg:夕食時空が青くなってきました】 【db5.jpg:雲の切れ間から見える雪山は、ガイスラー方面でしょう】


<Siusiシウージの象徴的な山、Sciliar/Schlernシリアル(2564m)が雲の間から顔を出し、光ってきました・・・>

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